藤井隆


モスクワの夜

 2002年2月の藤井隆のソロアルバム「ロミオ道行」は、大マジメに作られた、お笑い芸人らしからぬ出来の作品です。彼のラブコールに応えて松本隆がクオリティーの高い詞を提供、作曲家陣も豪華な顔ぶれです。中でも、収録曲「モスクワの夜」はタイトルからもうかがえるように、松本隆がバリバリに「さらばシベリア鉄道」を意識して詩作しており、作・編曲の本間昭光氏もそれに応えて聴きごたえのあるウィンター・ナイアガラ・サウンドを編み出しています。
 福生の大瀧家にあるのと同じ外国製高級CDプレーヤーで音楽を楽しむ本間昭光氏は、実は大滝詠一さんをリスペクトしているのであります。 



ポルノグラフィティー
NaNaNa ウィンターガール


 ポルノグラフィティーの2006年のアルバム「m-CABI」で、初回限定盤のエキストラCDに収録されているのが「NaNaNa ウィンターガール」という、ナイアガラー驚きの曲です。彼らの18作目のシングル「NaNaNa サマーガール」とメロディは同じで続編的歌詞の世界、しかし、アレンジは「君は天然色」のサウンドの仕掛けをそのまんま持ち込んだ、という珍品なのです。
 三連符を軽妙に刻むイントロ、スタッカートな2拍3連リズムのBメロ、歌詞中に登場する「君は天然色」という歌詞。ポルノグラフィティー自らが、「大滝さんに怒られないかな?っていうくらいのリスペクト具合」、「ラブ・オマージュです」と述べているだけあって、高い完成度≠誇っています。  実はこの曲、プロデューサーを務める本間昭光氏とレコーディング・エンジニア氏が大滝さんを尊敬してやまないがゆえの産物で、ポルノグラフィティー自身は「言われたとおりにやってみた」のだそうです。


いきものがかり
ありがとう
風と未来

 いきものがかりの18作目のシングル「ありがとう」は、2010年にNHKで放送された連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」の主題歌でした。この「勝負曲」のアレンジャーに起用されたのが、本間昭光氏です。歌い出しサビのメロディに絡むストリングスの旋律は、考えに考え抜かれた見事なもので、このサビの8小節が、聴いた者すべての心を掴んでしまうキャッチーさを備えていると言っても過言ではないでしょう。さらにはAメロにつなげるウワモノのシンセ・フレーズやサビ前のショートブリッジ的なフレーズなど、リスナーに感情移入してもらうための「分かりやすさ」に徹したアレンジが、この曲が万人に親しまれるための名ガイド役をこなしていると思うのです。
 この「万人に親しまれ、盛り上がってもらうための、ありきたりではないけれども分かりやすいアレンジ」こそが、本間昭光氏が、「ロングバケイション」から学んだ秘密なのでしょう。

 いきものがかりの「風と未来」は、2010〜2011年の「新・日産セレナ」のCMソングのために書き下ろされた曲です。大半のシングル曲を手がける水野良樹ではなく、もう一人の男性メンバー、山下穂尊の手による佳曲です。アレンジは、田中ユウスケ、近藤隆史、湯浅 篤、弦一徹(ストリングス)の連合軍。いきものがかりの作品は、島田昌典や松任谷正隆などなど、その曲ごとに最適なアレンジャーが割り振られているのです。「風と未来」では、日本音楽史上、御本家ナイアガラに次ぐくらいの厚く、エコーのかかった、こだわりのカスタネットが鳴り響いています。そこにこだわったリード役は、はたして誰だったのでしょう。




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