福山雅治


明日の☆SHOW

 2008年、自らが主役で登場するキリンの缶コーヒーのCM曲用に福山雅治が書き下ろしたのが「明日の☆SHOW」です。急な制作オファーだったのにもかかわらず、缶コーヒーの主購買層の男性会社員を応援する、というコンセプトを活かし切った曲作りをしており見事です。
 夢を実現できなかった、つまり、「明日のジョー」にはなれなかったけれどもガンバッテいる同世代の人たちに歌ってほしいと作った「カラオケソング」のバックに、敢えて今、ナイアガラサウンドを配した福山雅治も実は、もうすぐ40歳のナイアガラー世代です。
 福山雅治が「21世紀の大滝詠一風サウンドを目指した」というリッチなサウンドを支えるのは、井上鑑“バンマス”をはじめ一流ミュージシャンであり、ナイアガラ・セッション常連の徳武弘文、安田裕美の両氏らが奏でるアコースチックギター4本の厚みがまた、「らしさ」を醸し出しています。加えて、間奏の「ナイアガラ必殺リズム」とそれに続く2拍3連の仕掛け、三沢またろう氏の鳴らす生カスタネット…と、役者もそろっています。



鈴木建吾
Venus


 福山雅治主演のドラマ「パーフェクトラブ!」は、1999年夏の「月9」枠で放送され、脚本、演出、製作などのスタッフは、あの「ラブジェネレーション」と同じでした。福山雅治はドラマの挿入歌5曲を書き下ろし、それらは「Perfect Love! original songs book 『Rendezvous1』」という挿入歌集にまとめられました。
 この2曲目に収録され、新人の鈴木建吾が歌った「Venus」という曲は、福山雅治がナイアガラ路線を意識したのだろうと思える佳曲です。編曲は佐橋佳幸が担当しており、打ち込み主体のオケに佐橋佳幸のギターサウンドが心地よく、厚く鳴っています。
 この曲のメロディライン、特にAメロは抑揚が少なくて、「読経」系の眠けをさそう旋律なのですが、よく聞くとそれは、「A面で恋をして」に影響を受けているようなのです。世代的にリアルタイムにナイアガラサウンドを聞いてきた福山雅治が、「大瀧メロディ」をどんな印象を抱いてとらえているのかが分かり、興味深い一作でもあります。


キンモクセイ
桜坂

 2002年のセカンドシングル「ふたりのアカボシ」では吉田保氏のミックスによるエコーサウンドでナイアガラ・ファンの注目を集め、つづくサードシングル「七色の風」では、プロモーション盤のジャケットデザインであの「ロングバケイション」を真似てみせ、プロモーション・ステッカーでは「ナイアガラトライアングル VOL.2」のデザインを模して、「ナイアガラフォロワーズ」の信号を発した、彼らキンモクセイ。
 2005年の11thシングルは「夢で逢えたら」と「熱き心に」のカップリングであり、このとき大滝詠一さんとラジオでの共演も果たし、彼らのナイアガラ・リスペクトの絶頂を迎えました。
 2007年3月21日発売のアルバム「さくら」は、桜をテーマにした新旧名曲をキンモクセイがカバーしたもので、福山雅治のヒット曲「桜坂」も収録されています。この曲では、アコースティックなサウンドにカスタネットを大きく厚く鳴らし、お得意の「ナイアガラ・フォロワーズ・サウンド」を聴かせてくれます。
 当然、福山雅治の耳にも届いたと思われるこのカバーバージョンが、彼のナイアガラ・リスペクトを再燃させることとなって、翌2008年の「明日の☆SHOW」でナイアガラ・サウンドへ舵を切らせるきっかけになったのかもしれません。



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