#02 冬の妖精のきらめき

 大滝さんの発言によると、「ナイアガラトライアングル2」の大滝サイドの作品と松田聖子「風立ちぬ」のA面の楽曲を合わせると、1枚のシメトリック(線対称)なアルバムが出来るようになっているそうです。
 すなわち、「風立ちぬ=オリーブの午后」(カナリア諸島タイプ)、「一千一秒物語=白い港」(恋するカレンタイプ)、「ガラスの入江=Water Color」(雨のウェンズデイタイプ)、「いちご畑でつかまえて=ハートじかけのオレンジ」(FUN×4タイプ)、「冬の妖精=A面で恋をして」(君は天然色タイプ)という関係になっているのでしょう。

 「風立ちぬ」のアルバム1曲目を飾るのは、「ロング・バケイションの1曲目」「トライアングル2の1曲目」と同じ系統である「冬の妖精」です。いわゆるフィル・スペクターの「Da Doo Ron Ron」調のアップテンポな三連符を、ピアノとカスタネットが刻み続けるシンプルなアレンジが、特徴的です。

 イントロは、「冬の…」というだけに「スペクター・クリスマスアルバム」の「WINTER WONDERLAND」をヒントにしているのでしょうか。

 サウンドのエッセンスとして、あるいは鈴木茂が奏でるギターのリフのヒントとして、ナイアガラ・アイドルこと「シェリー・フェブレー」(SHELLEY FABARES)の曲、「HE DON’T LOVE ME」の存在があるように思います。
彼女、シェリー・フェブレーは、「ナイアガラトライアングル」の企画のヒントになったと言われる「TEENAGE TRIANGLE」のメンバーであり、アルバム「MORE TEENAGE TRIANGLE」の中で、この「HE DON'T LOVE ME」を歌っています。木村ユタカ氏は同曲について、「フィル・スペクター風サウンド」と評していました。


 さらにメロディの素材として1曲挙げるならば、「レスリー・ゴア」(LESLEY GORE)の「ルック・オブ・ラブ」でしょうか。この歌は、スペクター・ファンにはおなじみのソングライティング・チーム、「ジェフ・バリー&エリー・グリーニッチ」の手による名曲です。

 「わーたーしーは粉雪、わーたーしーは冬の妖精」というブレイク部分は、「スキータ・デイビス」(SKEETER DAVIS)のヒット曲を下敷きにしているようです。彼女はケンタッキー出身、カントリー畑の歌手で、ナイアガラの源流としてはちょっと異質な気もします。
 しかし、当該曲「I CAN’T STAY MAD AT YOU」の作者は、「キャロル・キング&ゲリー・ゴフィン」という、フィル・スペクターに関わりの深い作家コンビです。大滝さんのアンテナにそれがしっかりひっかかっていた様子が、うかがえるのではないでしょうか。

 こうしてみると、大滝さんは、ある一定の傾向を持つ曲たちをエッセンスにして「冬の妖精」をつくったのではないか、と思えてきますね。



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