#01 ガラスの入江のゆらめき

 1981年10月に出た松田聖子のアルバム「風立ちぬ」では、大瀧氏はA面の作曲、編曲、プロデュースを手がけています。A面5曲のどれもが素晴らしく、大滝詠一本人が男性歌詞で歌ってもしっくり来るであろう、個性豊かな曲が揃っています。

 「ガラスの入江」は、その5曲中では地味な曲であり、大滝氏の「雨のウエンズデイ」、「Water Color」などの系譜に属する曲と言えましょう。音数も控えめであり、8人のリズムセッションの他には、ほとんどオーバーダビングが加えられていないようです(間奏のオーボエはクレジットがないのですが、シンセサイザーによる代用でしょうか?)。

 最初の「好きだったのよほんとよ忘れないで…」のバックで弾かれるアコースチック・ギターは、大滝氏本人による控えめなストロークです。

 ところでこの曲、「ニール・セダカ」(NEIL SEDADA)の「バッド・ガール」という曲を全編のヒントにしているようです。「バッド・ガール」の出だしは『下がるメロディライン』ですが、「ガラスの入江」の歌い出だし「晴れた空を〜」は『上がるメロディライン』になっています。

 下敷きソングを基にして旋律を生み出すとき、私も同じ手法を用いたりしています。



mail to : rentaro_ohtaki@yahoo.co.jp