#07 「木の葉のスケッチ その2」

 1980年代のナイアガラ隆盛期には、「ナイアガラ的再生術」が多く試みられました。過去にヒットに恵まれなかったり陽の目を見なかったりしたナイアガラ作品に手を加え、新たな曲に仕立てて世に送り出す、という手法がとられたのです。大滝さんはこれを自嘲気味に「使いまわし」と呼んでいたこともありました。

 「木の葉のスケッチ」でその再生術の対象となったモチーフは、西城秀樹への提供曲「ロンサム・シティー」と思われます。両曲の歌いだしの8小節が共通しています。なかなか気づきにくいものなので、当サイトのサウンドライブラリーのコーナーにおいて、「ロンサム・シティー〜木の葉のスケッチ・サウンドバージョン〜」を近い将来に公開いたします。「百読は一聴に如かず」ということで、公開の折にはお聴きになってみてください。

 ナイアガラ史において、「真夏の昼の夢」が「オリーブの午后」に再生されたとき、その旋律の譜割りが細かくなったように、「ロンサム・シティー」から「木の葉のスケッチ」への変換でも同じ現象が見られます。それゆえに、「ロンサム〜」、「木の葉の〜」両曲の相似性については、気づかれにくくなっているのだと思います。

 この「ロンサム・シティー」は、西城秀樹のアルバム「ポップンガール・ヒデキ」に「スポーツ・ガール」とともに提供された曲で、両曲とも、作詞・松本隆、作曲・大瀧詠一、そして編曲・鈴木茂という布陣でした。夏に出たアルバムということで、レコードジャケットも夏の海辺のイメージであり、西城秀樹の『ギャランドゥ』な雄姿も披露されています。

 そして、「ロンサム・シティー」を作曲するにあたって、大滝さんが下敷きにしたのが、名曲「ビーチ・ガール」(Beach Girl)だと考えられます。この曲は、リップ・コーズ(Rip Chords )名義で、日本でも発売されて人気を博したアルバム「クーペでデート」に収録されていました。実際のところ、同アルバムは、後にビーチボーイズに参加することになるブルース・ジョンストン(Bruce Johnston)と、バーズをプロデュースしたテリー・メルチャー(Terry Melcher)の二人が、一流ミュージシャンのハル・ブレインなどを使いながら制作したものです。

 さらにいえば、「ロンサム・シティー」の歌いだしサビの後のAメロは、トニー・ハッチがペトゥラ・クラークのために書き下ろし、後にクリス・モンテスのバージョンで大ヒットした名曲「コール・ミー」(Call Me )の歌い出しの旋律に影響を受けているようです。この「コール・ミー」という曲は、大滝詠一さん自身の「Water Color 」でも、サビ後のAメロのモチーフになっているように思います。
 ナイアガラ史と絡めて「ロンサム・シティー」という曲を見てみると、「ロングバケイション」の直後に位置し、「ナイアガラ・トライアングル2」にも「イーチタイム」にも派生して行った、基幹作品だとも言えそうです。

 ロック歌謡曲からポップスに少し舵を切った西城秀樹のアルバム「ポップンガール・ヒデキ」において、他の作家陣は、ポール・アンカ調のいわばシャパニーズ・オールディーズ風味な曲を提供しています。それに対して、大瀧詠一さん提供の「ロンサム・シティー」は、圧倒的な風格の違いを感じさせる威光を放っています。そしてこの曲の落ちつき具合≠ェ、後の「イーチタイム」の「格調高さ」につながっている気がするのです。






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