#02 「銀色のジェット」

 「結果的になんですけど、ムード歌謡調になったという
  自信があるんです」
(大滝)

 「ハッピー&ブルーとか、そういう人たちにカバーしてもらえばピッタリくる」と、大滝さんは「銀色のジェット」についてコメンしています。個人的には、前川きよしに、イーチタイム20周年記念としてシングル・カバーしてもらえたら、と思ってしまいます。

 「銀色のジェット」は、「雨のウェンズデイ」「Water Color」「ガラスの入江」「探偵物語」などの系譜に属する曲としては、最後に発表された作品です。井上鑑のウエットなストリングスも相まって、重厚でしっとりした名曲に仕上がっています。

 ナイアガラ・フォロワーズで取り上げた、浜田省吾の「Midnight Flight」を聴くと、日本の空港が思い浮かべられる一方で、この「銀色のジェット」は、どことなく欧米の都市のエアポートをイメージさせる気もします。これは、受け手の偏見のせいなのか、作り手の音楽センスの違いによるものなのか、どちらなのでしょうか。(笑)

 このハイセンスさを感じさせるのは、ナイアガラ的引用の妙技も一因にあるようです。
 「銀色のジェット」の下敷きソングを、一つだけ挙げるならば、ブライアン・ハイランドの「 STAY AND LOVE ME ALL SUMMER 」でしょうか。「滑走路ーからー離陸してーく 銀色の機影 迷ってた君の〜」あたりの、コード進行とメロディの抑揚のヒントに、この「STAY AND LOVE ME ALL SUMMER 」が、なっているようです。
 「滑走路からー」というメロディで歌われる箇所にそれぞれ2回ずつ入る、ピアノの「ポロロロ ロン」と下るフレーズもまた、「STAY AND LOVE ME 〜」からヒントを得ているものと思われます。

 ブライアン・ハイランドといえば、一般的には、「パッパッパッパッパ ラッパパパパ」という曲、「ビキニスタイルのお嬢さん」の軟派なイメージが、あるかもしれません。しかし、なかなかどうして、スペクター・サウンドを生み出した舞台として有名なスタジオ「ゴールドスター」で、一流エンジニアによってレコーディングされた、彼、ブライアン・ハイランドのアルバムは名曲ぞろいであり、大滝さんの心を強くとらえて放さなかったに違いありません。

 事実、「STAY AND LOVE ME ALL SUMMER 」を聴いていると、大滝さんの「バチェラー・ガール」を歌い出したくなるのです。
 ひと粒で二度おいしいブライアン・ハイランド、というところでしょうか…。

※画像はフィクションです。


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