#06 恋するカレン その2

 1997年10月から放送開始となった月9ドラマ「ラブ ジェネレーション」の主題歌は大滝さんの「幸せな結末」でしたが、突貫工事≠フレコーディングでドラマの初回放映に間に合わせたのでした。前日の日曜の夕方まで、テレビでドラマの番組予告が流れるたびにバックで流れていたのは、まだ「恋するカレン」だったのです。ドラマの制作サイドからは「恋するカレン」のような曲を主題歌に、という要望があってのことだったのかもしれません。

 「恋するカレン」の元曲は、声優グループ・スラップスティックの1979年のアルバム用に大瀧さんが提供した「海辺のジュリエット」です。彼らへの提供作品のうち、「われらスラップスティック!」 や「スラップスティック見参!」といったギャグ・タイプの曲は、いわゆる詞先で制作され、「海辺のジュリエット」、「星空のプレリュード」、「デッキチェア」というメロディ・タイプの曲は、曲先であったようです。
 スラップスティックへの曲提供にあたり、初めに大瀧さんがイメージしたのは、ギャグ・タイプならばクレージーキャッツだったり、 メロディ・タイプならばリバプール・サウンドのグループであったりしたのではないでしょうか。

 「恋するカレン」の冒頭、「キャーンドールをー くーらくしーて」以下の部分で透けて見えてくるのは、デイヴ・クラーク・ファイヴ(The Dave Clark Five)の「悲しみこらえて」(HURTING INSIDE)です。彼らの英国での1965年のセカンド・アルバム「CATCH US IF YOU CAN 」に収録されています。日本では、米国盤シングルのA、B面をひっくり返してリリースされたようです。大瀧さんはコチラの方で出会ったのでしょうか。

 つづく、「きーみーが彼のせなーかに」以下の部分は、サーチャーズ(THE SEACHERS )の歌う「Where have you been 」を下敷きにしているようです。この曲は、サーチャーズの1964年のサード・アルバム「IT' S THE SEARCHSERS 」に収録されています。ナイアガラーにはおなじみの作家コンビ、バリー・マンとシンシア・ウェルによる名曲「恋は何処」(Where Have You Been All My Life)が、カスタネットを印象的に鳴らしたサウンドで、名カバーにトリートメントされています。

 「1964年は、エルヴィス蒐集を友達に任せて、私はリバプール勢をせっせとコレクトしていた時期だったのです」と大瀧さんが語っていましたが、その頃に聴いたマージー・ビート(リバプール・サウンド)の傑作バラードを紡いでみたのが「海辺のジュリエット」、のちの「恋するカレン」ではないかと思うのです。

 ドラマ「ラブ ジェネレーション」の主題歌に「恋するカレン」のような曲を、と所望されて、大滝さんが思い浮かべたのが、「海辺のジュリエット」を作曲したときの想い出ではないでしょうか。
 「幸せな結末」のイントロで聴かれるギター・サウンド2小節の部分は、デイヴ・クラーク・ファイヴの前述の「HURTIN' INSIDE」から引用して、鈴木茂のギター・フレーズを乗せたものでしょう。「幸せな結末」の歌いだし部分は、「イギリスのバカラック」と呼ばれるトニー・ハッチ作品の影響を受けていますが、サーチャーズをプロデュースして売り出していたのも、そのトニー・ハッチだったのです。


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