杉真理


夏休みの宿題

 スペクターのウォール・オブ・サウンドを、杉真理なりに表現したのが、1992年のシングル曲「夏休みの宿題」です。嶋田陽一氏の手によるアレンジでは、左チャンネルに打ち込みのリズム隊が、そして、右チャンネルには生演奏のリズム隊が配されて、「サンドイッチ的音壁サウンド」が構築されています。

 アップテンポで三連符のピアノが連打され、アクセントとしてカスタネットが鳴り響き、コーラスには須藤薫が参加して、、、とナイアガラ・ファンが心底楽しめる厚みのあるサウンドが、ひたすらストレートに展開されています。


峠恵子
恋はマジック


 峠恵子が杉真理に、こんな曲を作ってほしい、と熱望していたところに生まれたのが、名曲「恋はマジック」。この曲でも、嶋田陽一氏が、アップテンポの三連符ピアノにカスタネットを絡めた「王道サウンド」を繰り広げています。

 この「恋はマジック」の一節、「♪せつなさーも 恋しさーも」と上記「夏休みの宿題」の「♪去りゆく今年の夏に 残った僕の宿題」のくだりは、コード進行とメロディの流れが同じであり、これら2曲はいわば「兄妹曲」と言えそうです。

 「恋はマジック」は、峠恵子がレコード会社を移籍して1997年3月21日に、満を持してリリースした8枚目のシングル曲なのですが、結果として、彼女のメジャーレーベルからの最後のシングルとなりました。


須藤薫
花いちめん夢いっぱい(Alternate Version )

 杉真理作曲による名曲「花いちめん夢いっぱい」の、アルバム・バージョンでもシングル・バージョンでもない『Alternate Version 』は、この曲の初出から4年後の1985年に、新たに松任谷正隆によってリアレンジされたものです。このバージョンは、なんと、伊勢丹の館内放送用に作られたものなのです。

 本作では、ロック調のイントロからT.REXの「20センチュリー・ボーイ」を想起させるリフレインの歌いだしサビを経てしのびこむ、ストリングスの響きに、ナイアガラーはノックアウトされます。ミックスは吉田保氏です。この『Alternate Version 』のドリーミーなサウンドを聴くと、ナイアガラサウンドにおいてきらびやかなイメージが醸造されてきたのは、「松任谷正隆のストリングと吉田保氏のエコーのかけ合わせ」の果たした役割が大だったのだと、あらためて感じ入ります。

 この貴重なバージョンは、2007年8月にリマスターされて紙ジャケで限定生産された須藤薫のアルバム「パラダイス・ツアー」にボーナス・トラックとして収録されています。



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