浜田省吾 & THE FUSE


Midnight Flight −ひとりぼっちのクリスマス・イブ−
アルバム「Club Surf&Snowbound」収録


 無人島へ持っていきたいレコードとして、「ロングバケイション」をかつて挙げていた浜田省吾の、バラードの傑作中の傑作。歌詞の世界にメロディとサウンドが絶妙にマッチしています。
 ロンバケ、イーチタイムを経た後の1985年冬に発表されたこの曲には、ナイアガラサウンドに対する浜田省吾の、憧れと畏敬の念がつまっているようでもあります。
 エコーの奥深さを演出しているのは、筆頭ミキサーの助川健氏、そしてセカンド・エンジニアとして携わっている大野邦彦氏です。二人はともに、ロングバケイションでアシスタント・エンジニアを努めています。「あのサウンド」がどうしてもほしい、という浜田省吾のたっての希望による起用なのかどうかは、知る由もありませんが。



INFIX
微笑 〜I Stand Alone〜
アルバム「イノセント・エイジ」収録

 上記の「Midnight Flight」で編曲を担当したのが、浜田省吾のバンドTHE FUSEで永きにキーボードを担当していた板倉雅一でした。
 4人組のバンドINFIX(インフィクス)の名バラード、「微笑」でも、板倉雅一は「Midnight Flight」とまったく同じアレンジ手法によるサウンド・プロデュースを展開しています。いわば、スペクター、ナイアガラ影響下にあるJ-POP的音壁サウンドのうちの、ひとつの完成型を示している、と言えるのかもしれません。
 板倉雅一の経歴のうち、意外なところでは「仮面ライダークウガ」や「真珠夫人」で知られる俳優・葛山信吾とのユニット、Bricks
としての活動を1997年から続けており、以下のサイトでその活躍を知ることが出来ます。

『Bricks on the WEB』 http://flower.fmp.or.jp/bricks/index.html



美裕リュウ
ひとりぼっちの僕たち
アルバム「Ryu」収録

 浜田省吾& THE FUSEの後期メンバーとして、キーボードを担当していたのが、梁邦彦でした。医学部卒業後、1年間の勤務医を経てミュージシャンになったいう、変わり種の経歴を持つ彼の編曲は、正統な音楽教育を受けたことをうかがわせる毛並みの良いサウンドが特徴的です。
 作詞・作曲を高橋研が手がけた本作「ひとりぼっちの僕たち」が、中村あゆみの「翼の折れたエンジェル」(同じく高橋研の作)のようには汗臭くなく、「恋するカレン」系譜のジャパニーズ・ポップスの、王道サウンドの傑作として聴けるのも、梁邦彦のアレンジの手腕によるところが大きいと思います。

 もともとこの曲は、映画「800 トゥ ラップ ランナーズ」の挿入歌「ひとりぼっちの青春」として制作され、劇中では、ガンジーというグループが歌うバージョンが流れました。この幻の「映画バージョン」は、「ビー・マイ・ベイビー」調の直球スペクター・サウンドで、村松邦男の素晴らしい編曲によるものでした。ガンジーのリードボーカルは、後にゴスペラーズのメンバーとしてデビューする村上てつやで、歌唱もまた良かったのです。
 ところが、村上がゴスペラーズとして活動することを選択、ガンジーを脱退したため、ガンジーは映画公開前に解散(メンバーは、現在、スムースエースとして活躍中)。「ひとりぼっちの青春」はリリースされずに終わりました。
 なんとしてもこの名曲をCDで聴きたい、と思っていた私の前に、時を経て美裕リュウのバージョン「ひとりぼっちの僕たち」が有線放送から流れてきた時の歓喜ぶりと言ったら、高橋研事務所まで即行で問い合わせの電話をしてしまったほどで、つまり、それほどの名曲なのです。



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